「もしも」と書いていますが、前提となる課題は すでに統計に出ている現実 です。農林水産省・環境省の推計によれば、日本の食品ロスは令和5年度(2023年度)で 約464万トン(家庭系 約233万トン・事業系 約231万トン)。生産・流通段階の需給ミスマッチも、その一因です。
一方、農水省の 「みどりの食料システム戦略」(2021年策定)は、2050年までに有機農業の取組面積を 耕地の25%(100万ha) へ拡大する方針です。しかし2021年度時点では約2.66万ha・耕地の 0.6% にとどまります。拡大の壁は栽培技術だけでなく、「不安定な収量を、どこに・いつ・いくらで売るか」 という需給と販路にあります。
問いは「AIを入れるか否か」ではなく、「小規模生産者がどうロスを減らし、手取りを守りながら広げるか」 に移っています。
出典: 環境省・農林水産省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)」 / 農林水産省「みどりの食料システム戦略」
議論を具体にするため、架空の生産ネットワークを一つ設定します。自然栽培の小規模農家がゆるくつながった集まり。実在の特定団体ではありませんが、「収量は天候でぶれ、出荷判断は経験と勘」という構図は、前章のデータが示すとおりごく一般的なものです。
自然栽培にこだわる小規模農家が、理念を共有して個々に出荷してきた。質には自信がある。
天候で収量は年ごと・週ごとに大きく変動。出荷量の見通しが立たない。
どこにいくら出すかは経験と勘。豊作は売れ残って廃棄か投げ売り、読み違いで欠品も起きる。
各農家の実績と販路はLINEと手帳に分散。ネットワークとして需給を見渡せていない。
「読みが当たらない」だけの話に見えて、失われるのは 小規模生産者が続けられる経済 です。何もしなければ、次の層が同時に進みます。
3つのレイヤーで「勘を補助し、ネットワークで需給を回す」設計。鍵は、各レイヤーが 「だから何が変わるか」 まで接続していること。
天候・作付・過去実績から収量と需要を予測。→ だから出荷の見通しが「勘」から「根拠ある幅」になり、計画的に動ける。
どの販路に・いつ・いくらで出すかを最適化。→ だから廃棄と欠品を同時に圧縮でき、手取りの取りこぼしが減る。
ネットワーク全体で需給と販路をプールし、価格と信用を共有。→ だから個人の人脈依存を脱し、まとまった量で交渉でき拡大できる。
誠実に言えば、AIで自然や市場を支配できるわけではありません。担えるのは 予測・配分・可視化・販路マッチング まで。天候そのものや栽培品質、対面の信用、価格の最終決定は人が担います。AIは「勘を補助する」ものであって置き換えるものではありません。この線引きを最初に生産者と合意することが前提条件です。
収量・需要の予測/販路への配分最適化/ネットワーク需給の可視化/販路マッチング。「採れすぎ廃棄」「読み違い欠品」を止める。
天候と向き合う栽培、品質そのもの、取引先との対面の信用、最終的な価格と出荷の意思決定。データは助けるが、決めるのは生産者。
断定的なKPIではなく、共同実証で 検証したい仮説 として提示します。数値は方向性の目安であり、各仮説に 測り方 をセットにしています。「効果がある」と言い切るのではなく、一緒に確かめにいく対象です。
出荷量に対する廃棄率を前年比で計測。想定の目安: -30%/未実証
受注に対する欠品率と失注を計測。想定の目安: 欠品率の有意な低下/未実証
単位あたり手取りの平均と分散(ぶれ)を計測。想定の目安: 分散の縮小/未実証
ネットワークとして新規販路・取引量を増やせるか。定性評価
いきなり全品目・全農家に入れません。数戸・少品目で予測精度を確かめてから広げる ことを各段階に挟み、主役を生産者から動かさない設計です。原資はみどりの食料システム関連・地域の農業支援事業の活用を想定します。
各農家の実績・販路・データ粒度を確認し、何を成果指標にするか合意。費用・スコープも個別に確定。
1〜2品目で収量・需要の予測精度を検証。使える精度かを小さく確かめる。
一部出荷で販路最適化を試し、ロス・欠品を計測。仮説 H1・H2 の検証を開始。
参加農家を広げ産直・JAと連携。仮説 H3 を計測。座組は「主体=生産法人・ネットワーク/伴走=allfesta/連携=自治体・JA」。