「もしも」と書いていますが、前提となる課題は すでに統計に出ている現実 です。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家は 900万戸(過去最多)、空き家率は 13.8%(過去最高)。30年間で空き家は約2倍になりました。
そのうち、賃貸・売却用や別荘等を除く 「その他の空き家」は385万戸(2018年から約37万戸増)。これは 放置され活用されていない 住宅で、空家等対策特別措置法(2023年改正で「管理不全空家」を新設)のもと、自治体が対応を迫られています。しかし どの空き家が再生でき、どれが除却すべきか を選別する人手とデータが足りていません。
問いは「空き家を把握するか否か」ではなく、「限られた体制で、どこから手をつけるかをどう決めるか」 に移っています。
議論を具体にするため、架空の自治体を一つ設定します。郊外と中山間部を抱える市の空き家対策担当。実在の特定自治体ではありませんが、「台帳はあるが現況が古く、どこから手をつけるか決められない」構図は、前章のデータが示すとおりごく一般的なものです。
外観調査と台帳整備を一度実施。だが更新が追いつかず、現況は当時のまま。
近隣からの苦情があった物件に都度対応する後手の運用。全体像で優先順位がつけられない。
担当はわずか。何百件もの空き家を一件ずつ判断する時間がない。
法改正で「管理不全空家」への対応も求められるが、選別の根拠がないまま手が回らない。
「家が余っている」だけの話に見えて、失われるのは まちの安全と再生の機会 です。何もしなければ、次の層が同時に進みます。
3つのレイヤーで「どこから手をつけるかを決められる」設計。鍵は、各レイヤーが 「だから何が変わるか」 まで接続していること。
台帳・調査・苦情・公開情報を名寄せし、空き家を地図上で一元化。→ だから「全体で今どうなっているか」が初めて見える。
立地・状態・周辺需要から、再生可能性と危険度を生成AIで一次スクリーニング。→ だから全件を回らずに「先に見るべき物件」が絞れる。
物件ごとの対応方針案と、所有者向け通知・利活用提案の文書を半自動生成。→ だから判断から実行までの停滞が減る。
誠実に言えば、AIで空き家問題が解決するわけではありません。担えるのは 整理と優先順位づけ、文書化 まで。最終的な現地判定、行政指導・代執行の判断、所有者との交渉と合意は人が担います。AIは「どこから人が動くべきかを示す」ものであって、行政権限を代行しません。この線引きを最初に自治体と合意することが前提条件です。
分散データの統合と地図化/再生可能性・危険度の一次スクリーニング/対応方針・通知文書の生成。「後手と件数過多」を止める。
最終的な現地確認と判定、行政指導・代執行の判断、所有者との交渉と合意形成、責任の所在。決めるのは人。
断定的なKPIではなく、共同実証で 検証したい仮説 として提示します。数値は方向性の目安であり、各仮説に 測り方 をセットにしています。「効果がある」と言い切るのではなく、一緒に確かめにいく対象です。
一件あたりの優先度判定にかかる時間を従来比で計測。想定の目安: 約3倍/未実証
高リスク物件の特定から着手までの日数を計測。想定の目安: 有意な短縮/未実証
利活用に回せた物件の件数を前年比で計測。想定の目安: 掘り起こしの発生/未実証
苦情ベースから優先度ベースの運用に移行できるか。定性評価
いきなり全件を対象にしません。一地区で判定精度を確かめてから広げる ことを各段階に挟み、主役を空き家対策担当から動かさない設計です。原資は空き家対策総合支援事業等の活用を想定します。
台帳・調査・苦情・公開情報の所在と粒度を確認し、判定基準と成果指標を合意。費用・スコープも個別に確定。
対象地区で名寄せ・地図化と優先度判定を試行し、現地確認と突合して精度を評価。
対応方針・通知文書の生成を実務で試用。仮説 H1・H2 の検証を開始。
空家等対策計画の運用に組み込み全域へ。仮説 H3 を計測。座組は「主体=自治体/伴走=allfesta/連携=住宅・建築部門」。