「もしも」と書いていますが、前提となる課題は すでに統計に出ている現実 です。林野庁の森林・林業白書によれば、林業就業者は1980年の約14.6万人から、2020年には 約4.4万人 まで減少し、高齢化も進んでいます。現況を歩いて把握する人手そのものが細っています。
一方で、戦後造成された人工林の多くが 主伐期(一般的な目安で50年生・10齢級)を迎え、資源は充実しています。「資源は増えるのに、見て・計画して・回す手が足りない」というミスマッチが構造化しています。2019年施行の 森林経営管理法(森林経営管理制度) は、経営管理が行われない森林を市町村に集約する仕組みですが、その前提となる現況把握が追いついていません。
問いは「衛星を使うか否か」ではなく、「限られた人手で、どう現況を把握し計画を回し続けるか」 に移っています。
議論を具体にするため、架空の森林組合を一つ設定します。県内中山間地に広がる人工林を抱える組合。実在の特定組合ではありませんが、「台帳は紙とExcel、現況は数年前の踏査ベース」という構図は、前章のデータが示すとおりごく一般的なものです。
先人が造成した人工林が一斉に育ち、いまや多くが主伐期。資源としては成熟している。
職員は減り、毎木調査で歩ける範囲は年々縮小。現況データは数年前のまま更新できていない。
境界不明・所有者不明の区画が点在し、手のつけようがないまま放置されている。
更新できないまま古い現況で経営計画と補助金申請を回しており、過小・過大評価のリスクを抱えている。
「データ更新が遅い」だけの話に見えて、失われるのは 森を適切なタイミングで扱う機会 そのものです。何もしなければ、次の層が同時に進みます。
3つのレイヤーで「少ない人手で回る計画更新」を作る設計。鍵は、各レイヤーが 「だから何が変わるか」 まで接続していること。
衛星・航空レーザ等の広域データから樹種・材積・経年変化を概況把握。→ だから、歩く前に「森全体の今」がわかり、踏査ゼロ前提の計画から脱却できる。
AIで「精度を上げるべき区画」を絞り、限られた踏査をそこに集中。→ だから全部を歩かずに必要精度を確保でき、少人数でも現況が回る。
台帳と突合し、経営計画の更新と補助金申請の根拠を半自動で生成。→ だから策定リードタイムが縮み、制度に必要な裏づけが出せる。
誠実に言えば、衛星で森林経営が完結するわけではありません。担えるのは 広域把握と優先順位づけ まで。最終的な毎木精度や所有者の合意、施業の意思決定は人が担います。衛星は「現地調査を賢く減らす」ものであって、現地を消すものではありません。この線引きを最初に組合・行政と合意することが前提条件です。
樹種・材積の概況把握/経年変化の検知/調査優先順位づけ/計画・申請帳票の生成。「現況が古い」「全部は歩けない」を止める。
最終的な毎木精度の現地検証、境界・所有者の合意形成、施業の意思決定と安全管理。データは判断を助けるが、判断そのものは人が担う。
断定的なKPIではなく、共同実証で 検証したい仮説 として提示します。数値は方向性の目安であり、各仮説に 測り方 をセットにしています。「効果がある」と言い切るのではなく、一緒に確かめにいく対象です。
1計画区あたりの策定日数を、従来手法と比較。想定の目安: 約1/4/未実証
必要精度を満たすための踏査人日を前年比で計測。想定の目安: 踏査工数の有意な減少/未実証
現況データの平均経過年数が更新サイクルで短縮するか。想定の目安: 鮮度の維持/未実証
森林経営管理制度・補助金申請に耐える根拠を生成できるか。定性評価
いきなり全域をデータ化しません。一団地で精度を検証してから広げる ことを各段階に挟み、主役を組合・市町村から動かさない設計です。原資は森林環境譲与税・林業関連の補助事業の活用を想定します。
台帳・既存調査・必要精度の要件を確認し、何を成果指標にするか合意。費用・スコープも個別に確定。
衛星×現地データを突合し、実測との精度を評価。使える精度かを小さく確かめる。
重点調査フローと計画・申請帳票の生成を試走。仮説 H1・H2 の計測を開始。
複数団地へ展開し制度運用に接続。仮説 H3 を計測。座組は「主体=森林組合・市町村/伴走=allfesta/連携=林務水産部」。