もしも、赤字路線バスの継続判断に生成AIを使ったら。
これは 想定ユースケース です。課題は公的調査が示す実在のもの、登場する自治体は構想を具体化するための架空のモデル。「この未来をどう一緒にデザインするか」という対話の起点としてお読みください。
想定イメージこれは、空想ではない。
「もしも」と書いていますが、前提となる課題は すでに統計に出ている現実 です。国土交通省の資料によれば、2007年度以降で 約13,991kmの乗合バス路線が廃止 されています。さらに自動車運転者の時間外労働に年960時間の上限が課される 「2024年問題」 で運転者不足が加速し、減便・路線廃止が各地で続いています。
一方、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律のもとで 地域公共交通計画 の策定が求められ、「策定済み(策定中含む)」の自治体は 70.4% に達しています。計画は作られても、「どの路線を、どの水準で、いつまで残すか」 の判断材料と更新の手が足りていません。
問いは「計画を作るか否か」ではなく、「限られた原資で、どの交通をどう残すかをどう決め続けるか」 に移っています。
出典: 国土交通省「地域交通をめぐる現状と課題」 / 国土交通省「地域公共交通計画の現状等」 / 公益社団法人日本バス協会 ヒアリング資料(運転者不足)
想定する、ひとつの自治体。
議論を具体にするため、架空の自治体を一つ設定します。中山間部を抱える地方都市の交通政策課。実在の特定自治体ではありませんが、「計画はあるが赤字路線の存廃を毎年先送りしている」構図は、前章のデータが示すとおりごく一般的なものです。
路線網が生活を支えた
通学・通院・買い物の足として路線バスが機能し、誰もが時刻表を知っていた。
減便と空気輸送
利用者減と運転者不足で減便。便はあるが乗っていない区間と、乗りたいのに便がない区間が併存する。
存廃を先送りしている
赤字額は積み上がるが、住民の反発を恐れ「もう一年」を繰り返す。判断の根拠が示せない。
運転者不足で限界
2024年問題で減便圧力がさらに強まり、場当たり対応では計画と現実が乖離していく。
何もしないと、何が起きるか。
「赤字をどうするか」だけの話に見えて、失われるのは 移動できない人の生活そのもの です。何もしなければ、次の層が同時に進みます。
- 場当たり減便の悪循環:根拠なく減らすほど不便になり、利用者がさらに減る。
- 移動困難者の孤立:通院・通学・買い物の足を失う高齢者・学生が増える。
- 計画と現実の乖離:計画はあるのに現場と合わず、検証も更新もされない文書になる。
- 説明責任の欠如:存続も廃止も住民に根拠を示せず、合意形成のたびに消耗する。
想定するアプローチ。
3つのレイヤーで「根拠を持って交通を残す判断」を作る設計。鍵は、各レイヤーが 「だから何が変わるか」 まで接続していること。
需要と収支の
可視化
利用実績・人口・施設配置から路線ごとの需要と収支構造を可視化。→ だから「なんとなく赤字」ではなく、どこに誰の移動があるかが見える。
だから「なんとなく赤字」ではなく、どこに誰の移動があるかが見える。代替案の
シミュレーション
減便・デマンド化・再編など代替案の影響を生成AIで試算。→ だから「廃止か維持か」の二択でなく、第三の案を住民に提示できる。
だから「廃止か維持か」の二択でなく、第三の案を住民に提示できる。計画ドラフトと
説明資料
地域公共交通計画の見直しドラフトと、住民説明用の根拠資料を半自動生成。→ だから合意形成に根拠を持って臨め、計画が更新され続ける。
だから合意形成に根拠を持って臨め、計画が更新され続ける。AIでできること、できないこと。
誠実に言えば、AIで路線の存廃が決まるわけではありません。担えるのは 根拠の整理と選択肢の提示 まで。最終的な政策判断、住民合意、運転者の確保は人と地域が担います。AIは「決める人の判断を支える」ものであって、決定を代行しません。この線引きを最初に自治体・事業者と合意することが前提条件です。
可視化・試算・資料化
需要と収支の可視化/代替案シミュレーション/計画ドラフトと説明資料の生成。「根拠なき先送り」を止める。
政策判断・合意・運行
最終的な政策判断、住民との合意形成、運転者の確保と安全運行、財源の決定。データは助けるが、決めるのは人。
検証したい仮説。
断定的なKPIではなく、共同実証で 検証したい仮説 として提示します。数値は方向性の目安であり、各仮説に 測り方 をセットにしています。「効果がある」と言い切るのではなく、一緒に確かめにいく対象です。
計画見直しの
リードタイム短縮
1路線の見直し案作成にかかる日数を従来比で計測。想定の目安: 約1/3/未実証
合意形成の
消耗が減る
説明会回数・差し戻し回数を前年比で計測。想定の目安: 有意な減少/未実証
移動困難の
取りこぼしが減る
代替案で救済される移動需要の割合を試算・実測で検証。想定の目安: 取りこぼし縮小/未実証
計画が
更新され続ける
計画の見直しサイクルが回り、現況との乖離が縮むか。定性評価
想定する進め方。
いきなり全路線を対象にしません。一路線で判断材料を作って自治体が使う ことを各段階に挟み、主役を交通政策課・事業者から動かさない設計です。原資は地域公共交通確保維持改善事業等の活用を想定します。
対話とデータ棚卸し(約1〜2か月)
利用実績・収支・計画の現状を確認し、何を判断材料とするか合意。費用・スコープも個別に確定。
一路線でPoC(約3〜6か月)
対象路線の需要・収支を可視化し、代替案を試算。判断材料として使えるかを小さく確かめる。
説明資料の試走(約6〜12か月)
住民説明用ドラフトを実際の合意形成で試用。仮説 H1・H2 の検証を開始。
計画運用への接続(次年度〜)
地域公共交通計画の見直しサイクルに組み込む。仮説 H3 を計測。座組は「主体=自治体・事業者/伴走=allfesta/連携=運輸局」。
一緒に、祭を起こしませんか。



