前提は統計に出ている現実です。全国の藻場は 約1,643km²(約16.4万ha)。環境省が高解像度衛星画像の解析で全国分布を整備しました——つまり「衛星×解析で藻場を測る」という発想は、すでに国の基礎調査で現実に使われています。
その藻場は 海藻・海草によるCO2吸収(ブルーカーボン) の担い手でもあります。海草・海藻藻場の吸収量 約35万t-CO2/年(2022年度) が国連(UNFCCC)の温室効果ガスインベントリに算定・報告されました(海藻藻場の報告は世界初)。藻場は国の脱炭素算定の正式対象になっています。
しかし磯焼け・沿岸開発で藻場は失われ続け、瀬戸内海のアマモ場は約30年で約7割減 とされます(水産庁)。そして再生施策の効果検証やJブルークレジットのMRV(測定・報告・検証)は 潜水調査・目視に依存 し、天候・安全・コストの負担が大きい。問いは「藻場が大事か否か」ではなく、「失われる海の森を、どう測り、再生し、資金につなぐか」 です。
議論を具体にするため、架空の自治体・漁協を一つ設定します。磯焼けに悩む沿岸地域の水産担当と漁協。実在の特定地域ではありませんが、「藻場が減っているのは分かるが、分布も再生効果も潜水調査任せで把握しきれない」構図は、前章のデータが示すとおりごく一般的なものです。
藻場の分布・被度・吸収量の把握が潜水調査・目視に依存。天候・安全・コストの負担が大きい。
磯焼けの原因(食害魚・ウニ・高水温等)が地域でばらばらで、画一対策が効かない。
藻場の吸収量は国連報告まで到達した脱炭素資産。だがMRVが重く小規模では担いきれない。
効果検証が事後的・定性的で、Jブルークレジット市場の機会を逃す。
「藻場が減る」だけの話に見えて、失われるのは 沿岸の生産力と脱炭素資産 です。何もしなければ、次の層が同時に進みます。
3つのレイヤーで設計します。鍵は、各レイヤーが 「だから何が変わるか」 まで接続していること。最終判断は人が担う前提です。
水中・空撮・衛星の画像をAI解析し、藻場の分布・種類・被度を把握。→ だから潜らずに「どこに、どれだけ」を掴める。
食害対策・母藻投入・増殖礁などの施策後の回復を経年で追跡。→ だから「どの施策が効いたか」を見える化できる。
吸収量の推定とMRVに必要な経年データ・レポートのたたき台を生成。→ だからクレジット申請の前段が軽くなる。
誠実に言えば、画像/衛星×AIで潜水調査がゼロになるわけではありません。担えるのは 分布の把握・経年モニタリングと、吸収量・MRVの前段データ まで。種の同定の確定、クレジットの第三者検証、再生施策の判断は専門家・現地が担います。AIは「重点的に潜るべき場所を絞る」ものであって、検証を代行しません。
画像/衛星×AIによる藻場の分布・種類・被度の把握/再生効果の経年モニタリング/吸収量・MRVの前段データ生成。潜水調査の重点箇所を絞り込む。
種の同定の確定、Jブルークレジットの第三者検証、再生施策・予算の判断と責任。確定するのは専門家・現地。
断定的なKPIではなく、共同検証で 確かめたい仮説 として提示します。数値は方向性の目安であり、各仮説に 測り方 をセットにしています。「効果がある」と言い切るのではなく、一緒に確かめにいく対象です。
藻場の計測にかかる工数・時間を従来比で計測。想定の目安: 削減/未実証
モニタリングを高頻度・広範囲に行えるか。想定の目安: 高頻度化/未実証
再生施策の効果(回復量)を定量的に示せるか。想定の目安: 定量化/未実証
Jブルークレジット申請の前段データを作れるか。定性評価
いきなり全海域に広げません。一海域で画像解析と潜水調査の突合を確かめてから 広げる設計で、主役を水産担当・漁協から動かしません。クレジット化を見据える場合は第三者検証の要件に沿う前提で設計します。
対象海域・取得手段(水中/空撮/衛星)・既存調査と成果指標を合意。費用・スコープも個別に確定。
対象海域でAI解析の精度を潜水調査と突合して評価。
定点で経年比較と施策効果を試行し、仮説 H1・H2 を計測。
藻場再生事業・Jブルークレジットに接続。座組は「主体=自治体・漁協/伴走=allfesta/連携=検証機関」。