前提は統計に出ている現実です。公立小中学校施設の約6割が築40年以上(文部科学省)。第2次ベビーブーム期に集中整備された校舎の更新期が一斉に到来し、その多くが改修を要します。公立小中学校の約9割は避難所に指定されており、防災面でも先送りできません。
これは学校に限りません。国土交通省の推計では、建設後50年以上の 道路橋は約37%(2023年)→約75%(2040年) へ。トンネル・河川・港湾も同時期に5割超が50年を超え、老朽化が「面」で同時進行 します。
費用も膨らみます。インフラの維持管理・更新費は 2018年度の約5.2兆円が、事後保全のままだと2048年度に最大約12.3兆円(約2.4倍)。予防保全に切り替えれば約6.5兆円に抑えられると試算されています。問いは「直すか否か」ではなく、「限られた人と予算で、どこから直すかをどう決めるか」 です。
議論を具体にするため、架空の自治体を一つ設定します。多数の学校・公共施設を抱える市の施設・営繕担当。実在の特定自治体ではありませんが、「修繕要望が処理能力を超え、どこから直すかが担当者の経験頼みになっている」構図は、前章のデータが示すとおりごく一般的なものです。
事後保全に追われ、コスト効率の良い予防保全に手が回らない。
修繕要望が山積みで、優先順位づけが担当者の経験・感覚に依存(属人化)。
土木・建築職の確保が難しく、特に小規模自治体で深刻。
事後保全のままだと2048年度に最大約12.3兆円規模へ。判断ノウハウも退職で失われる。
「修繕が遅れる」だけの話に見えて、危ういのは 住民の安全と財政 です。何もしなければ、次の層が同時に進みます。
3つのレイヤーで設計します。鍵は、各レイヤーが 「だから何が変わるか」 まで接続していること。最終判断は人が担う前提です。
点検記録・修繕要望・施設台帳を名寄せし、施設横断で一元化。→ だから「全体で今どうなっているか」が初めて見える。
劣化度・安全度・利用状況・防災上の重要度から、修繕優先度を生成AIで一次スクリーニング。→ だから全件を回らずに「先に見るべき施設」が絞れる。
なぜこの優先度かの根拠と、起案・説明資料のたたき台を生成。→ だから議会・住民への説明と引き継ぎが楽になる。
誠実に言えば、AIで老朽化が解決するわけではありません。担えるのは 情報の集約と一次トリアージ、根拠の文書化 まで。現地の劣化判定、工法・予算の決定、発注と安全管理は技術職員が担います。AIは「どこから人が確かめるべきかを示す」ものであって、技術判断を代行しません。
点検・要望・台帳の名寄せ/劣化度・安全度・防災重要度からの修繕優先度の一次スクリーニング/判断根拠・説明資料の文書化。「後手と件数過多」を止める。
現地の劣化判定、工法・予算の決定、発注・安全管理・最終的な優先順位の確定と説明責任。決めるのは技術職員。
断定的なKPIではなく、共同検証で 確かめたい仮説 として提示します。数値は方向性の目安であり、各仮説に 測り方 をセットにしています。「効果がある」と言い切るのではなく、一緒に確かめにいく対象です。
要望の一次トリアージにかかる時間を従来比で計測。想定の目安: 短縮/未実証
優先度判定のばらつき(担当者間)を評価。定性評価/未実証
事後対応に追われず先回りで着手できた割合を計測。想定の目安: 増加/未実証
優先順位の根拠を資料化して示せるか。定性評価
いきなり全施設を対象にしません。一施設群で判定の妥当性を確かめてから 広げる設計で、主役を技術職員から動かしません。原資は公共施設等適正管理推進事業等の活用を想定します。
点検記録・要望・台帳の所在と粒度を確認し、判定基準と成果指標を合意。費用・スコープも個別に確定。
対象施設群で一次トリアージを試行し、現地確認と突合して妥当性を評価。
起案・説明資料の生成を実務で試用。仮説 H1・H2 を計測。
個別施設計画・長寿命化計画に組み込み全域へ。座組は「主体=自治体/伴走=allfesta/連携=技術部門」。