「もしも」と書いていますが、前提は すでに統計に出ている現実 です。全国の土地の 約2割が所有者不明(不動産登記簿等では所有者の所在が直ちには分からない)とされ、その 発生原因の約63%が相続登記の未了 です(国土交通省)。
所有者不明土地は2016年時点で 約410万ha(九州を超える面積)、対策を打たなければ 2040年に約720万ha へ拡大し、累計の経済損失は約6兆円にのぼると推計されています(所有者不明土地問題研究会)。2024年4月には 相続登記が義務化(取得を知った日から3年以内、正当な理由なき違反は10万円以下の過料)され、申請・問い合わせはさらに増えています。
その一件ごとに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)を集め、旧字・手書き・縦書きの古い戸籍を読み解いて相続人を確定する実務が発生します。問いは「やるか否か」ではなく、「限られた人手で、どこから手をつけるか」 に移っています。
議論を具体にするため、架空の自治体を一つ設定します。中山間部を抱える市の戸籍・資産税の担当。実在の特定自治体ではありませんが、「戸籍の広域交付は始まったが、傍系や数次相続では結局個別に集めるしかない」構図は、前章のデータが示すとおりごく一般的なものです。
旧字・手書き戸籍の読解と相続人の判定が、ベテラン職員・専門職の暗黙知に依存。
相続登記の義務化と高齢化で、申請・相談・職務上請求が積み上がる。
窓口でまとめて取れるようになったが、傍系(兄弟姉妹・甥姪)は対象外。数次・代襲相続で個別取得が残る。
読解できる職員・専門職が減り、1件あたりの戸籍解読が処理の律速になる。
「書類が多い」だけの話に見えて、止まるのは まちの土地利用そのもの です。何もしなければ、次の層が同時に進みます。
3つのレイヤーで設計します。鍵は、各レイヤーが 「だから何が変わるか」 まで接続していること。最終判断は人が担う前提です。
旧字・手書き・縦書きの戸籍画像を読み取り、続柄・婚姻・養子・死亡などの事項を構造化。→ だから一枚ずつ目で追う初動が軽くなる。
構造化した事項から法定相続人の候補と続柄の相関図を自動でたたき台化。→ だから「誰が相続人か」の全体像が早く掴める。
連続性の欠落(取得漏れの戸籍)や矛盾を指摘し、次に取るべき戸籍を提示。→ だから取り寄せの手戻りが減る。
誠実に言えば、相続人の確定をAITが代行するわけではありません。担えるのは 読み取り・構造化と相関図の下書き、欠落の指摘 まで。法定相続人の最終確定、戸籍の真正性の判断、相続手続そのものは、職員・司法書士等の専門職が担います。AIは「どこを人が確かめるべきかを示す」ものであって、法的判断を代行しません。
旧字戸籍の読み取りと構造化/相続人候補の相関図ドラフト/戸籍の連続性の欠落・矛盾の洗い出し。「一枚ずつ追う初動」を軽くする。
法定相続人の最終確定、戸籍の真正性・例外事案の判断、相続手続と説明責任。確定するのは人。個人情報の取り扱いは行政の管理下で行う前提。
断定的なKPIではなく、共同検証で 確かめたい仮説 として提示します。数値は方向性の目安であり、各仮説に 測り方 をセットにしています。「効果がある」と言い切るのではなく、一緒に確かめにいく対象です。
戸籍束から候補・相関図のたたき台を得るまでの時間を従来比で計測。想定の目安: 数倍/未実証
欠落指摘により追加取得の往復回数を計測。想定の目安: 有意な減少/未実証
読解できる職員に依存せず一次処理できる範囲を評価。定性評価/未実証
なぜこの相続人かを根拠戸籍に紐づけて示せるか。定性評価
いきなり本番事案に使いません。過去の確定済み事案で精度を確かめてから 広げる設計で、主役を担当職員・専門職から動かしません。個人情報は行政の管理下に置き、外部送信や学習利用はしない前提で設計します。
取り扱う戸籍の種類・粒度・セキュリティ要件と成果指標を合意。費用・スコープも個別に確定。
過去の確定事案で読み取り・相関図の精度を人手突合で評価。
新規事案の一次処理に試用し、仮説 H1・H2 を計測。最終確定は職員・専門職。
戸籍・資産税・専門職連携の運用に組み込み。座組は「主体=自治体/伴走=allfesta/連携=司法書士等」。