前提は統計に出ている現実です。全国の図書館は 3,394館(令和3年度・過去最多)。拠点は増え続けています。ところが 国民1人当たりの貸出は5.3冊(2010年度)をピークに4.2冊(2020年度)へ 頭打ち〜減少。「場所」はあるのに、市民が本にたどり着く「入口」が細っています。
背景には担い手の問題があります。日本図書館協会の集計では、公共図書館の 専任職員は全体の約2割にとどまり、約76%が非常勤・委託・派遣。レファレンス(調べもの相談)という図書館本来の強みを支える専門人材が薄く、サービス自体が市民に十分認知されていません。
そしてOPAC(蔵書検索)は件名標目やNDC分類を前提とした 専門的な語彙 で、「恐竜が好きな子に、図鑑じゃない物語を」のような自然な言い方では空振りします。問いは「蔵書があるか」ではなく、「市民の言葉で、どう蔵書とレファレンスに橋を架けるか」 です。
議論を具体にするため、架空の自治体を一つ設定します。中規模市の中央図書館。実在の特定館ではありませんが、「蔵書も司書もいるのに、市民は探しあぐねて検索エンジンへ流れていく」構図は、前章のデータが示すとおりごく一般的なものです。
件名・分類前提の検索で、自然な言い方では引けない。使い方は司書が個別に補ってきた。
館数は増えても利用指標は伸びず、調べもの需要はネット検索・生成AIへ流出。
専任は約2割、約76%が非正規。レファレンスの担い手と認知が不足。
利用が下がるほど予算・人員が削られ、さらに非正規化が進む悪循環に入りやすい。
「本が借りられない」だけの話に見えて、失われるのは 地域の知の入口 です。何もしなければ、次の層が同時に進みます。
3つのレイヤーで設計します。鍵は、各レイヤーが 「だから何が変わるか」 まで接続していること。最終判断は人が担う前提です。
「こういう本ない?」を自然な言い方で受け、件名・分類に翻訳して蔵書を横断検索。→ だから語彙を知らない市民でも空振りしない。
関連テーマ・読み方の道筋を提示し、相談前のセルフ解決を支援。→ だから司書の専門相談が、本当に必要な人に集中できる。
検索結果を在架状況・予約・取り寄せにつなぐ。→ だから「探す」から「借りる」までの段差が減る。
誠実に言えば、AIが司書の代わりになるわけではありません。担えるのは 自然語の受け止めと蔵書への橋渡し、セルフ解決の支援 まで。深いレファレンス、選書、資料の評価は司書が担います。個人の貸出履歴や属性は扱わず、蔵書・調べもの検索に限定する設計を前提とし、回答の根拠(どの蔵書か)を必ず示します。
自然な言い方を件名・分類に翻訳した蔵書横断検索/関連テーマの提示によるセルフ解決/在架・予約への接続。個人の貸出履歴は扱わない。
専門的なレファレンス、選書・蔵書構成、資料の真贋・質の評価、利用者対応の最終判断。決めるのは司書。
断定的なKPIではなく、共同検証で 確かめたい仮説 として提示します。数値は方向性の目安であり、各仮説に 測り方 をセットにしています。「効果がある」と言い切るのではなく、一緒に確かめにいく対象です。
自然語クエリのヒット率(専門語彙を知らない利用者)を計測。想定の目安: 向上/未実証
相談前に自力で資料へ到達できた割合を計測。想定の目安: 増加/未実証
定型問い合わせの減少で、深い相談に割ける時間を評価。定性評価/未実証
検索→貸出/予約への転換率を計測。想定の目安: 改善/未実証
いきなり全蔵書・全館に広げません。一館・一分野で検索精度を確かめてから 広げる設計で、主役を司書から動かしません。個人情報は扱わず、回答は蔵書に紐づけて根拠を示す前提で設計します。
蔵書データの形式・粒度・プライバシー要件と成果指標を合意。費用・スコープも個別に確定。
対象分野で自然語検索の精度を司書突合で評価。
相談前セルフ解決を実務で試用し、仮説 H1・H2 を計測。
生涯学習・学校連携に接続し全館へ。座組は「主体=図書館/伴走=allfesta/連携=教育委員会」。