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BENCH / WHAT PUBLIC SATELLITE DATA CAN AND CANNOT DO

できることと、できないことの地図。

公開衛星データで、何ができて、何ができないか。国が「これが仕事だ」と定義して発注した実物を、答え合わせの相手にしています。国が発注している用途は9業種でした(落札実績13年度分・312,584件)。その9つは、全部測っています。
測定9業種(2026-09 時点)
答え合わせの相手官公庁の落札実績 312,584件
技術の壁7種類
捕まえた測定の欠陥26件
01 / SCOPE

「15業種」は、実態ではなかった。

出発点は、宇宙ビジネスの資料によくある「衛星データ用途15業種」の表でした。全部を福岡で実装して走らせたあと、その表そのものを調達の実態で当て直しました。落札実績13年度分・312,584件のうち、衛星データの解析・調査業務は332件です。

結果、国が発注しているのは9業種でした。保険・金融・小売・観光は、13年で1件もありません。不動産の5件は4件が被災家屋の推計(=防災)で、残る1件は撮影実態のアンケート。空港運輸の46件は、すべて「航空レーザ」が「航空」に引っかかった誤りでした。

これから入る側にとって、いちばん高くつくのは「誰も対価を払っていない用途に開発費を入れること」です。分母から先に確かめられます。

測定した用途エネルギー(太陽光)/農業(水稲)/林業(森林伐採)/防災(浸水域)/行政(土地利用)/インフラ(地盤変動)/水産(藻場)/健康(スギ花粉)/環境(大気)
発注が無かった用途保険・金融・小売・観光。31万件で該当なし。技術の問題ではなく、買い手がいない
件名だけで実体が無かった用途不動産・空港運輸。件名は引っかかるが、中身は別業種か非衛星
ゼロの側に動く予算内閣府「小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証」年10億円超、経産省「先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証」。需要が確立していない領域には、需要を作るための予算が動いている
この検索の限界落札実績は中央省庁の競争入札のみ。随意契約と自治体の発注は含まれない。「存在しない」ではなく「中央省庁の競争入札には無い」まで
02 / RESULTS

測った用途と、その結果。

各業種で、結果を見る前に「何がどこまで出るはず」と合格ラインを書いて、あとから動かさないことにしました。外したときは、値ではなく測り方を疑う手順まで先に決めています。判定は自己申告ではなく、外部の正解データに当てています。

入口の枠組みは「衛星が空から実際に測っているものは4つしかない」——強度・波長・偏波・位相、言い換えると色・温度・電波の跳ね返り・気体の吸収。測った業種を通して、4つすべてに実測が付きました。観測量が違えば、当たる壁も違います。

太陽光発注 2億1,100万

市町村別の容量推計は相関 0.940、面積を統制しても 0.940。目視で確かめた適合率は 0.5ha以上で 40.8%。

壁=解像度(屋根上のPVと屋根そのものは分光で区別できない)
水稲発注 896万・733万

光学は 3/16 市町村しか成立せず(福岡は田植えが梅雨と完全に重なる。晴天率 0〜5.5%)。SARに替えて 16/16、VV単独 0.239 → VV+VH 0.814。

壁=観測量の選択
森林伐採発注 1,435万・555万

全市町村に同じ基準値を当てると相関 0.156 で未到達。ところが画素レベルの AUC は全11市町村で 0.906〜0.974 ——順位はどこでも効いていた。市町村ごと上位1%に切り替えて 0.835。

壁=閾値の較正
浸水域発注 4,540万

浸水当日を、無料衛星は1機も観測していない。Sentinel-1 の回帰は12日、Sentinel-2 は当日の雲 99.3%。3日後には水が引いていて AUC 0.574。

壁=適時性(この金額が買っているのは手法ではなく、撮像を依頼できること)
土地利用発注 3,600万

陸域4クラス一致率 0.841(何も判定せず全部「森林」と答えるだけでも 0.583 出るので、それと比べている)。森林は再現率 0.939 だが農地 0.440、内水 0.408。

壁=正解の所在(仕様書の適合品質水準は「判読原図と誤率0%」)
地盤変動発注 6,812万

国土地理院が全国の変位速度を無料・無認証のタイルで配信している。凡例から色を逆引きすれば cm/年 で取り出せる。

壁=制度(技術ではなく、応札できるか)
藻場発注 公告中

浅海域 AUC 0.461 / 0.469 / 0.460 ——3つの海域・3つの日付で揃った。混合画素を全部落としても改善せず、7つの特徴量を正解を見て選んでも上限 0.60。

壁=有料側(ただし50cmと8バンドが同時に変わるので、何を買うのかは分離できない)
スギ花粉発注 1,772万 + 1億6,123万

夜の地表面温度で相関 0.333 が出たが、Terra が2020年2月に軌道保持を終了しており、傾きが +0.083 → +0.812 K/年 に折れていた。対象4年がまるごと汚染期間。

壁=基準の漂流
大気(NO2)発注 1億3,889万

NO2 の分布は正しく測れている(大阪>神奈川>千葉…北海道が最低)。それでも県別 CO2 排出量は人口で 0.85〜0.95 説明でき、衛星は上積みしない。

壁=既存統計との重複
03 / WALLS

技術の壁は、7種類あった。

9業種で止まった原因を、何が足りなくて届かなかったかで分類すると、7種類になりました。解像度のような単一の尺度には収まりません。業種を増やせば種類も増えるので、7種類で打ち止めという根拠はありません。

壁 1 / 有料側買えば解ける 無料の10mでは、孤立した乗用車は 2.5 m/画素、空港の機体は 4.1 m/画素で舗装と区別がつかない。ただし藻場では WorldView が 50cm と 8バンドを同時に変えるので、何を買っているのかは分離できない。有料側の壁は、解像度という一語では言い表せない。
壁 2 / 観測量の選択測る前に決まっている 福岡の田植えは梅雨と完全に重なるので、光学では原理的に見えない。SAR に替えたら 3/16 → 16/16。どの観測量で見るかは、手法を選ぶより前に決まっている。
壁 3 / 閾値の較正正解なしで先に分かる 固定の基準値が別の地域でも通用するのは、探すものが際立って目立つときだけ。それを見分けるには、地域ごとに検出率がどれだけばらつくかを見ればよく、正解データは要らない。3倍なら固定の基準で足り、23.7倍なら地域ごとに上位何%かで切り直す。
壁 4 / 適時性回帰周期 ÷ 事象の長さ 浸水は数時間〜3日で消える。回帰12日に対して事象3日なら、手法を何にしても間に合わない。9業種のうち、契約金額が何を買っているかを説明できるのはここだけで、買っているのは手法ではなく撮像を依頼できることである。
壁 5 / 正解の所在検定にかけられない 国土数値情報(土地利用)の適合品質水準は「誤率0%」だが、比較相手は現実ではなく判読原図。正解が発注者の判断の中にあり、外から到達度を測れない。費用は素材ではなく、判断に払われている。
壁 6 / 基準の漂流道具が年とともに動く Terra は2020年2月に軌道保持を終了し、通過時刻が漂流している。夜の地表面温度の傾きが 9.8倍 に折れる。年をまたいで比べる業務では直接の壁になり、有料センサでも同じで、買っても解けない。
壁 7 / 既存統計との重複到達しても売れない NO2 は物理的に正しく測れている。それでも県別 CO2 排出量は人口で 0.85〜0.95 説明でき、衛星は上積みしない。無料か有料かとも無関係。合格ラインに「既存の統計に勝てているか」を入れない限り、この壁は見えない。
BEFORE WE START

届く線を、先に引く。

「アルゴリズムが足りない」で止まった項目は、1つもありません。止まるのは、解像度・観測量・閾値・時刻・正解・基準・重複のどれかです。
04 / METHOD

測定の欠陥を、26件捕まえた。

このベンチの信頼性は、正しく測れた回数ではなく間違いを何回捕まえたかで決まります。26件すべて、エラーを出さずにそれらしい値を返していました。そのうち10件は「良い結果」を返していた——悪い結果は疑うが良い結果は疑わない、という非対称が、この種の測定では最大の敵です。

だから毎回、結果を見る前に予測と合格ラインを書いて動かさないことにし、外したら値ではなく測り方を疑う順番まで先に決めておきました。

形 1MEASURE

直した作業が、次の誤りを呼ぶ

格子合わせを直したあと、比較のために測定を書き直したら、標本の選び方が元と変わっていた。前後比較のつもりで、比べてはいけないものを比べていた。数字は普通に出る。

形 2STACK

1つの測定に、4つ重なる

藻場では、季節・判定域・補正係数・サングリントの4つが同時に壊れていた。4つ潰し終えるまで「無料では届かない」と書けない。潰す前に書けば、方法の限界ではなく自分の実装の欠陥を壁として記録することになる。

形 3DEFAULT

自分の既定値が、探し物を消す

自分で書いた grep が結果行を全部落として「0件」と読んだ。別の回では、辞書の既定値が未登録のコレクションを黙って別のサーバーへ流していた。「存在しない」と「探し場所を間違えた」が区別できなくなる。

形 4GOOD NEWS

当たって見えたときこそ危ない

機構どおりの符号で4通りが揃ったので物理として正しいと読みかけたが、正体はセンサーの経年変化だった。別の回では、データ量を確認せずに間引いて、先に書いた予測にぴったり合う値を出した。標本を増やしたら動いた。

数字で見る
発注が実在する用途。その全部を実測(2026-09 時点)9業種
技術の壁。うち買って解けるのは1つだけ7種類
捕まえた測定の欠陥。うち10件は良い結果を返していた26
「アルゴリズムが足りない」で止まった項目0
05 / WHAT WE LACK

うちに、無いもの。

技術の壁とは別に、制度の壁を4種類測りました。そのうち3つは、うちが持っていないものです。組む相手を探しているので、先に出します。

測ったどの業種でも、「アルゴリズムが足りない」で止まった項目はありませんでした。止まっているのは技術ではなく体制です。

体制(人数)唯一の実測された失敗。八戸市の公募に応募し、中身は高評価のまま、代表1名の体制で不採択。技術で勝って制度で負ける形。
実績(受注歴)港湾の公告は「過去5年間において…業務を請け負った実績」。受注歴がないと応札できず、応札できないと受注歴が作れない。
書類(ISMS 等)情報セキュリティ水準の証明。IPA のベンチマークは無料の自己申告だが、27設問の多くが従業者教育・委託先管理・内部監査など組織を前提にしている。正直に付けると平均4.0に届かない。
資格ここは問題にならなかった。建設コンサルタント登録も技術士も要求されておらず、全省庁統一資格だけ。個人事業主でも取れる。
顧客衛星データ解析の直接の受注実績が無い。dx-fukuoka.com で公開して動いているものは、すべて自主開発。
06 / TOGETHER

入りたい側と、組みたい。

探しているのは、衛星データ解析の受注歴はまだ無いが、官公庁・自治体の受注歴と体制はある事業者です。測量・建設コンサル、地域のSIer、ドローン事業者、農林水産の事業体。この市場に入りたいが、どこから手を付ければ死なないかが分からない、という段階の方。

既に衛星データ解析で受注歴のある会社にとっては、うちと組む利点がありません。補完が成り立つのは、片方に無いものを片方が持っているときだけです。

YOUR SIDE

体制・受注歴・顧客・書類

制度の壁4つのうち3つが、そちら側で埋まります。応札できる状態を、組んだ瞬間に作れる。

OUR SIDE

業種ごとの実測と作法

どこで出てどこで詰まるか、要求値がどの文書に書いてあるか、必ず踏む罠26個。単独では買えないもので、時間でしか作れません。

NO CONFLICT

単独で客を取りにいけない

体制が無いことは、顧客を持つ側にとって、競合しないことの保証になります。

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