できることと、できないことの地図。
「15業種」は、実態ではなかった。
出発点は、宇宙ビジネスの資料によくある「衛星データ用途15業種」の表でした。全部を福岡で実装して走らせたあと、その表そのものを調達の実態で当て直しました。落札実績13年度分・312,584件のうち、衛星データの解析・調査業務は332件です。
結果、中央省庁の競争入札に出ているのは9業種でした。保険・金融・小売・観光は、13年で1件もありません。不動産の5件は4件が被災家屋の推計(=防災)で、残る1件は撮影実態のアンケート。空港運輸の46件は、すべて「航空レーザ」が「航空」に引っかかった誤りでした。
ただし2026年10月に見直したところ、いちばん大きなお金は、この数え方の外にありました。水田の作付確認です。県か県の協議会が契約1本で発注するので、中央省庁の入札一覧には載りません。分母を確かめたつもりで、分母の取り方そのものが漏れていました。
これから入る側にとって、いちばん高くつくのは「誰も対価を払っていない用途に開発費を入れること」です。分母から先に確かめられます。そして、その分母を誰が発注しているかまで確かめる必要があります。
測った用途と、その結果。
各業種で、結果を見る前に「何がどこまで出るはず」と合格ラインを書いて、あとから動かさないことにしました。外したときは、値ではなく測り方を疑う手順まで先に決めています。判定は自己申告ではなく、外部の正解データに当てています。
入口の枠組みは「衛星が空から実際に測っているものは4つしかない」——強度・波長・偏波・位相、言い換えると色・温度・電波の跳ね返り・気体の吸収。測った業種を通して、4つすべてに実測が付きました。観測量が違えば、当たる壁も違います。
市町村別の容量推計は相関 0.940、面積を統制しても 0.940。目視で確かめた適合率は 0.5ha以上で 40.8%。
壁=解像度(屋根上のPVと屋根そのものは分光で区別できない)光学は 3/16 市町村しか成立せず(福岡は田植えが梅雨と完全に重なる。晴天率 0〜5.5%)。SARに替えて 16/16、VV単独 0.239 → VV+VH 0.814。ただしこれは市町村単位の集計。お金が出ている作付確認は田1枚ごとで、福岡の田 486,787区画のうち 77%(面積で45%)は、縁から10m内側に 10m画素がまるごと3個も入らない。
壁=観測量の選択(市町村単位)/有料側(田1枚単位)全市町村に同じ基準値を当てると相関 0.156 で未到達。ところが画素レベルの AUC は全11市町村で 0.906〜0.974 ——順位はどこでも効いていた。市町村ごと上位1%に切り替えて 0.835。
壁=閾値の較正浸水当日を、無料衛星は1機も観測していない。Sentinel-1 の回帰は12日、Sentinel-2 は当日の雲 99.3%。3日後には水が引いていて AUC 0.574。
壁=適時性(この金額が買っているのは手法ではなく、撮像を依頼できること)陸域4クラス一致率 0.841(何も判定せず全部「森林」と答えるだけでも 0.583 出るので、それと比べている)。森林は再現率 0.939 だが農地 0.440、内水 0.408。
壁=正解の所在(仕様書の適合品質水準は「判読原図と誤率0%」)国土地理院が全国の変位速度を無料・無認証のタイルで配信している。凡例から色を逆引きすれば cm/年 で取り出せる。
壁=制度(技術ではなく、応札できるか)浅海域 AUC 0.461 / 0.469 / 0.460 ——3つの海域・3つの日付で揃った。混合画素を全部落としても改善せず、7つの特徴量を正解を見て選んでも上限 0.60。
壁=有料側(ただし50cmと8バンドが同時に変わるので、何を買うのかは分離できない)夜の地表面温度で相関 0.333 が出たが、Terra が2020年2月に軌道保持を終了しており、傾きが +0.083 → +0.812 K/年 に折れていた。対象4年がまるごと汚染期間。
壁=基準の漂流NO2 の分布は正しく測れている(大阪>神奈川>千葉…北海道が最低)。それでも県別 CO2 排出量は人口で 0.85〜0.95 説明でき、衛星は上積みしない。
壁=既存統計との重複技術の壁は、7種類あった。
9業種で止まった原因を、何が足りなくて届かなかったかで分類すると、7種類になりました。解像度のような単一の尺度には収まりません。業種を増やせば種類も増えるので、7種類で打ち止めという根拠はありません。

届く線を、先に引く。
測定の欠陥を、26件捕まえた。
このベンチの信頼性は、正しく測れた回数ではなく間違いを何回捕まえたかで決まります。26件すべて、エラーを出さずにそれらしい値を返していました。そのうち10件は「良い結果」を返していた——悪い結果は疑うが良い結果は疑わない、という非対称が、この種の測定では最大の敵です。
だから毎回、結果を見る前に予測と合格ラインを書いて動かさないことにし、外したら値ではなく測り方を疑う順番まで先に決めておきました。
直した作業が、次の誤りを呼ぶ
格子合わせを直したあと、比較のために測定を書き直したら、標本の選び方が元と変わっていた。前後比較のつもりで、比べてはいけないものを比べていた。数字は普通に出る。
1つの測定に、4つ重なる
藻場では、季節・判定域・補正係数・サングリントの4つが同時に壊れていた。4つ潰し終えるまで「無料では届かない」と書けない。潰す前に書けば、方法の限界ではなく自分の実装の欠陥を壁として記録することになる。
自分の既定値が、探し物を消す
自分で書いた grep が結果行を全部落として「0件」と読んだ。別の回では、辞書の既定値が未登録のコレクションを黙って別のサーバーへ流していた。「存在しない」と「探し場所を間違えた」が区別できなくなる。
当たって見えたときこそ危ない
機構どおりの符号で4通りが揃ったので物理として正しいと読みかけたが、正体はセンサーの経年変化だった。別の回では、データ量を確認せずに間引いて、先に書いた予測にぴったり合う値を出した。標本を増やしたら動いた。
うちに、無いもの。
技術の壁とは別に、制度の壁を4種類測りました。そのうち3つは、うちが持っていないものです。組む相手を探しているので、先に出します。
測ったどの業種でも、「アルゴリズムが足りない」で止まった項目はありませんでした。手法の側の壁は壁3(閾値の較正)だけで、これは正解なしで見分け方が分かっています。AIで作れるところまで作って残った壁は、法律・データ・人の3種類にまとまります。
壁7(既存の統計で足りる)と下の「顧客」は、買い手がいるかどうかの壁です。これは作れるかどうかの次に来る、ビジネスの壁として分けています。
解析を持つ側と、現地を担いたい。
探しているのは、衛星データ解析をすでに受注していて、九州で導入を広げたい事業者です。
衛星による作付確認は、県か県の協議会が契約1本で発注し、県内の協議会の25%以上がそろうことが要件です。福岡なら63協議会のうち16か所以上。衛星の判定は解析側が持っています。残るのは、協議会をそろえること、台帳と地図を突き合わせること、衛星で判定できない区画をどう回るか決めること——現地側の仕事です。
9月の版では「衛星データ解析で受注歴のある会社には、うちと組む利点がない」と書いていました。見直して、結論が逆になりました。福岡の田は77%の区画が無料衛星の画素に収まらず、自前の解析で入る道は閉じています。補完が成り立つのは、解析を持つ側と、現地を持つ側です。
解析・受注歴・体制
衛星の判定と、発注者に出せる実績。制度の壁のうち、実績・体制・書類はそちら側で埋まります。
福岡の現地と、測り方
協議会ごとの導入前の確認、田の区画と台帳の突合、衛星で判定できない区画の洗い出し。9業種の実測と、必ず踏む罠26個も持ち込みます。
解析では競合しない
福岡の田では無料衛星が届かないと自分で測ったので、自前の解析エンジンは持ちません。解析の客を取りにいかないことの保証になります。
一緒に、祭を起こしませんか。
